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令和4年3月7日
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◆ 知事メッセージ

3つの希望の種

 和歌山県は、 私の子供の頃から見ると日本の中でも相対的に経済が地盤沈下をしている県であります。 知事に就任して、 何ということかと思い、 何とかこの状況を挽回してやるぞと思って、 ずっとありとあらゆることを頑張ってきました。

 和歌山県が今より上位にあった頃、 何でそうであったかと考えると、 流行りの重化学工業が隆々とし、 木材、 繊維、 雑貨などの伝統産業も元気があり、 みかんなども大いに高く売れて儲かるという時代でした。 観光業も盛んでその足となる鉄道は整備されて、 町はにぎわい、 まだ子供もたくさんいて、 教育熱心な家庭は子女を県外の大学に通わせてという時代でした。

 そうなると人々はこれでいいんだ、 余計なことはしなくてもという気分になります。 仁坂少年の周りでも次々と建っていく住金の煙突を見て、 どちらかというとネガティブな感想を持っていた人が多かったと子供心にも覚えています。 「そんなことせんでも食べていける」というのが、 つい最近亡くなりました母の口癖でした。

 その結果、 新しい産業を誘致したり、 育てたり、 あるいは土地を売って高速道路をつけてもらったりという動きに積極的になれない和歌山県が続いたのではないかと思います。 事実、 製造業の産業構造は当時とあまり変わっていないし、 高速道路の完成はうんと遅れました。 しかし、 経済は生き物です。 国際環境と国際競争力は変化し、 これでいいんだと思っていた元の仕事は成り立たなくなりますし、 新しい企業に来てもらおうとしても、 高速道路もない、 そんな不便な所へ行けるかということになってしまいます。 また、 車で行くのが不便な和歌山の観光地より、 もっと便利な他地域へ行くよということで観光もだんだんと打撃を受けていきます。

 この状況を直していこう、 昔日の勢いを取り戻すぞ、 そのためには、 不利をもたらしている条件の一つ一つを具体的に改めていかねばいけないというのが、 仁坂県政の15年です。 高速道路のような基礎条件も全国並みに直していかねばならないと動き出して、 うまくいきそうだった時、 民主党政権の反公共事業政策でとん挫し、 少なくとも5年は遅れました。 企業誘致も、 私が通産省でずっと産業振興に携わり、 貿易摩擦のような後片付けもしていたような時代なら、 知識集約型・ハイテク産業の投資の芽がいっぱいあったけれど、 今は製造業の大型投資がうんと少なくなっています。 それでも一つ一つ頑張って積み重ねていく毎日ですが、 その毎日毎日、 人は年をとっていき、 国際競争力の荒波はずっと寄せ続けています。 昨日まで何とかもってくれた従来の企業などがもう終了だということになるのです。 なんとかやりくりしていた中小企業や農家が後継ぎがいなくてやめてしまう、 人々が年をとって収入がなくなり、 介護のお世話になるという趨勢が毎日押し寄せてきます。

 したがって、 古い体質のものは新しく脱皮し、 新しい成長の種を呼んできて、 その芽を育てなければなりません。 その観点から和歌山にも希望の種がたくさんありますので、 今回はそのうち3つについて報告いたします。

 第1は、 ENEOSの和歌山工場の精油機能の停止に伴う跡地活用についての協議会の開始です。 1月25日突如としてENEOSが有田市、 海南市にまたがる製油所の精油機能を停止するとの発表をし、 和歌山中に衝撃が走ったことは1月26日の本メッセージ「エネオス和歌山製油所の製油所機能の停止」の通りです。 しかし、 そうなるとこれも既報の通り、 この工場は工業品出荷額で和歌山県の17%、 有田市に至っては92%のシェアをもち、 正社員約500人、 下請社員は約1000人の人たちが働いている工場です。 とりわけ有田市はみかん、 漁業など他の産業もありますが、 ENEOSに昔から依存し、 相協力し、 共に発展してきた町で、 いわばENEOSのモノカルチャー経済ですから、 市民の打撃と苦しみは想像を超えています。

 地球温暖化、 カーボンニュートラルの大きなうねりの中で石油の需要は減ってくるでしょうから、 企業の存続のためには精油機能の縮減は宿命的な取り組みだと思いますが、 一方ENEOSは、 これからも世界をリードするエネルギー企業として、 脱皮をし、 飛躍していくことを考えているはずですから、 これまでの石油精製に代わる何らかの新エネルギー生産を考えているはずでしょう。 それなら、 モノカルチャーの有田市や和歌山県を見限ることなく、 次の会社経営の主力となるような事業を是非有田でやってほしいと思っています。
 ENEOS側も、 私が1月26日にENEOSへ乗り込んだ時も、 何らかの代替案を考えているように思えましたし、 大田社長のほうからむしろ地元とENEOSで協議会を作って今後のことを考えていきましょうと言ってくれました。
 その成果が2月25日、 第1回目の「和歌山製油所エリアの今後の在り方に関する検討会」が開かれて結実しました。
 中身はまだまだこれからですが、 会社と経済産業省をメンバーとして、 検討会に引っ張り出したということは少なくとも和歌山にとっての希望の第一歩であると思います。 何といっても地元の雇用が守られるよう、 そしてできれば新しく展開される新事業がENEOSの主力事業となって、 また新しいENEOSと有田市の共存共栄が図られるようになることを祈ります。

 第2は、 2月28日にパナソニック株式会社が発表した「新型車載用リチウムイオン電池」の生産設備の和歌山工場への設置です。 紀の川市にあるパナソニックの電池工場が舞台になるのですが、 現在は、 ごくわずかなラインで小型リチウムイオン電池の電極板を製造しています。 この工場は1991年に建造された松下電産の中では比較的新しい工場ですが、 もとは通常の電池を作っていたのを、 2006年にパソコン用リチウムイオンの量産工場に変えてくれたという経緯があります。 当時は折からパソコンの需要が大爆発し、 その中に入れるリチウムイオン電池の需要が大拡大していた時に、 当時の松下電池の守口市にある主力工場が火事になり、 世界競争に置いて行かれないように、 松下も急速にリチウムイオン電池の生産拡大をしなければならなくなったという事情がありました。 決死の覚悟で紀の川工場の早期増改築についての協力要請に来られた松下電池の社長に対して、 和歌山県は紀の川市の協力のもと、 種々の規則手続きを予想希望の期日よりもはるかに早く片付けて協力をし、 驚きの早期立ち上げに成功したのでした。

 ところが、 こうして立ち上げた紀の川工場も、 テクノロジーの進歩による需要の変遷と国際競争力の移り変わりで、 その後大整理を余儀なくされ、 私がようやく頼み込んで前述の電極板製造で命脈を保ってもらったのでした。 そして今回の朗報。 海外に出すぎた重要技術をもう一度日本に呼び戻そうという国家プロジェクトの第二弾として、 経済産業省の後押しも得て、 これから急ピッチで改装が始まります。 和歌山県は、 この作業が遅れることがないように、 再び最大限の協力を行っていくつもりです。 少し前に現在のパナソニック株式会社エナジー社の社長さんから、 本件の途中経過を聞いていましたが、 会社の話を私たち行政からオープンにするわけにはいきません。 (その割には会社サイドとしか思えないような情報リークが度々ありましたが)したがって、 正式な発表が会社からある前はノーコメントに徹していました。

 これからノーカーボンの流れで電気自動車の需要が急拡大するであろうから、 その必需品である車載用リチウムイオン電池の需要も大いに伸びていきます。 その中で松下幸之助さんが出生された本県で、 そのパナソニックを担う工場が再び力強く起動し始めるということを期待しています。 また、 来るべき電気自動車の時代を見据えれば、 今の規模の何倍かの生産力も持つ必要があるでしょう。 この点についても是非和歌山で投資をということをパナソニックに働きかけていきたいと思います。
 この工場が和歌山の希望の種として成長してくれることを望みます。

 第3の希望の種はIRです。 いよいよ具体的な構想案が見えてきて、 4月末の政府への区域整備計画案の提出まで大詰めの作業になっています。 また、 議会の議決などはもちろん、 パブリックコメント、 説明会、 公聴会なども丁寧に行わなければなりません。

 IRについては、 もともとかけ事の嫌いな日本の風土の中であんまり好ましく思っていない人もいます。 しかし、 ヨーロッパなどではIRの一部であるカジノは紳士のたしなみとして、 むしろ好感をもって受け止められるものであるし、 ましてIRになると、 観光や商業やエンターテインメントなどサービス産業化の先兵として、 世界では今高く評価されています。 現にシンガポールでは2010年に一気に二つの大IRをオープンしたことで、 産業構造の大変化が起こり、 大幅な成長と所得向上を達成しました。 シンガポールは、 それまでの海運と石油化学などの重工業の国から、 サービス産業の国へ脱皮をし、 同時に高い経済成長を遂げました。 幸い和歌山でもIRを造りたいという私の願いに呼応してくれて、 なかなか元気のある海外有力企業グループが名乗りを上げてくれています。 新型コロナで先行き不透明な中でよくここまで来てくれたなあと思います。 このチャンスを逃す手はありません。 我々の試算ではIRの開業(うまくいけば日本で一番早く、 2027年です)により、 和歌山県のGDPは一割弱ジャンプアップする見込みです。 もちろんこれによって依存症の日本人が多く現れたりすることはあってはなりません。 そのために日本では世界最強の依存症防止規制を法制化していますが、 和歌山県ではこれをさらに上回る自主規制を実施することにしています。 (これを具体的に明示して説明しているのは、 今のところ和歌山県だけです。 )事実あのシンガポールでは、 IR開業後依存症になる人は急減しています。

 和歌山が過去の栄光を取り戻すための希望の星はこのほかにも、 ロケット発射場建設、 IT企業の集積、 スマート農業、 ワーケーションなどがありますが、 これらすべてを結実させて、 人が集まってくるような元気な和歌山を作りたいと思います。


和歌山県知事 仁坂吉伸


 
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