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- ホーム > 組織から探す > 広報課 > 和歌山県庁メールマガジン > バックナンバー > 令和4年10月20日
県知事の仕事はものすごく多岐にわたるのですが、
多くの団体が頑張ってくれていて、
その中には名誉を与えられて形だけタイトルをもらっているものもあります。
16年前の知事就任時、
こういうのがたくさんあったので、
ほとんどの場合はラインの長からは引かせていただき、
顧問など脇のポストに移らせてもらいました。
しかし、
中にはこれは県庁の直接的な仕事と同様と考えて取り組んだほうがいいなと思って、
そのまま会長等にとどまらせてもらったものがあります。
そのうちの一つが青少年育成協会です。
若者を健全に育て上げるのは、
地域にとって最重要な課題ですが、
それには、
学校教育と並んで地域、
家庭の指導が大変重要です。
その後者を担うのが青少年育成協会です。
和歌山県の青少年育成事業はかつて小野知事から大橋知事の時代とても盛んで、
その中心は青年団活動だったと思います。
地域にできたそれぞれの青年団で、
若い人たちが集い、
その中でもより年長のものが年少のものを指導する、
自らの経験を伝え、
人の生き方、
道徳、
社会の仕組みなどを教え、
それを次々と若者から若者へと引き継いでいくのが青年団活動だったように思います。
大橋知事などは、
今の古老に聞くと、
この活動にとても思い入れがあり、
それぞれの活動を顕彰し、
助成し、
指導してくれたそうです。
それを良しとし、
その経験を今に伝えてくれていたのが青少年育成協会だと思います。
私が知事に就任をした16年前も今もその指導的地位を占めるキーパーソンは変わりませんが、
遠慮なく言えば、
少しかつての輝きをなくしていたかなと思います。
せっかく組織ができ、
青少年育成の志の高い人たちが集まっているのだから、
これを活性化するにしくはなし、
何せ目的が青少年の健全育成という大事なものなのだからと私は思いました。
そこで、
日頃の活動にもきちんと参加し、
例えば総会や理事会は自分自身で出席し、
多くの善男善女の好意に応えようとしました。
また、
財政上の理由で整理寸前となっていた各地の青少年の家も残し、
指定管理によって、
もっと効率的で魅力的な運用をしてもらうことにしました。
また、
何とかもっと活発な青少年育成事業ができないものかといろいろと思い悩みながら、
各地を回っていろいろな会合に出、
話を聞いていると、
ヒントになるようなものに至ります。
例えば、
先ほどの青年団活動につながる若者の親睦、
交流組織は伊都・橋本地方ではちゃんと残っていました。
先輩が後輩をかわいがって指導し、
その後輩が成長して、
また後輩を指導するというシステムがここには残っていました。
この伊都橋本青少年団体連絡協議会の活動とかつらぎ町の青少年健全育成の取組をモデルに「リレー式次世代健全育成システム」という制度を作り、
全県的にこのような若者の連帯と育成のシステムを県主導で作ろうとしました。
事業はまだ発達がそれほど顕著ではないかもしれませんが、
少なくともその芽だけは大橋知事の昔以来もう一度出せたと思います。
それらをバックアップしてくれる青少年育成協会の事業も盛んです。
「少年メッセージ」や「家庭の日 絵画コンクール」も熱心な応募者を得続けています。
青少年が教えられたとおりに実行するというのは、
それもいいことですが、
自分でいいことを考えて自分で実行するというのはもっと大事なことです。
自分で考えて確立された道徳律や善行は教えられただけのものより強固です。
同様に「リレー式次世代健全育成システム」のように後輩に教えた道徳律や善行は、
教えたからには自分自身が破るわけにはいきません。
こうした活動の成果が、
毎年子供・若者育成支援県民大会として各地で行われます。
今年も10月16日海南市下津町の海南市民交流センターで行われました。
数多くの立派な指導者の業績と、
善行を積んだ青少年や、
ふれあいとやすらぎのある家庭をテーマとした上手な絵画作品を表彰するとともに、
全県から厳正な審査の上選ばれた青少年の主張のうち、
最高賞を得た桐蔭中学3年の園部暢也君の「あたたかな輪」という発表と、
地域のグループの活動の報告として海南市立下津第一中学校の「地域と関わりながら育つ私たち」と県立海南高等学校美里分校の「分校の窓から世界が見える 〜小さいことはいいことだ〜」が披露されました。
すべて素晴らしかったのですが、 とりわけ園部暢也君の「あたたかな輪」という弁論は心に響き、 感涙を催しました。 今話題のヤングケアラー問題を自らの経験を用いて、 率直に述べたのが感動的でした。 これから彼は全国大会に進むのですが、 あんまり素晴らしいので以下に本人の了承を得て、 引用します。 是非お読みください。 『少年メッセージ2022 金賞(最優秀賞)
タイトル「あたたかな輪」
和歌山県立桐蔭中学校 3年 園部 暢也
みなさんはヤングケアラーという言葉を聞いたことがあるだろうか。
近年、
このヤングケアラーと呼ばれる人が増加し、
大きな問題となっている。
ヤングケアラーとは、
「家事や家族の世話、
介護、
感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」と、
定義されている。
ヤングケアラーは、
病気や障害のある家族の介護などで、
本来受けるべき教育を受けられなかったり、
人間関係の構築がうまくできなかったりすることが多い。
また、
進学や就職を断念する子どもも多く、
将来を大きく左右されてしまうこともあるそうだ。
こう聞いても、
この問題を身近に感じる人はおそらく少ないだろう。
しかし、
昨年行われた厚生労働省の調査によると、
中学生で17人に1人が「世話をしている家族がいる」と回答しており、
これは僕の通う桐蔭中学校に14人も居る計算になる。
僕も、
3年前母がくも膜下出血になってから、
介護とまではいかないが、
母の手助けをする機会が多くなった。
くも膜下出血になって母は著しく記憶力が低下してしまった。
また、
一時期は右半身が不随状態となり、
立ち上がることはおろか、
手助けなしでは歩けなかった。
だから、
母が助けを必要とする時、
僕はどんなに学校の勉強や塾の課題で忙しくても、
手助けをしなければいけなかった。
自分に余裕がない時や、
悲しくて、
辛い時でも母に助けを呼ばれる。
だから僕は、
つい怒ってしまった時もあった。
そんな時、
母は「ごめんね、
もう呼ばないようにするね。
」と言った。
僕は、
母にそう言わせてしまったことがとても悲しかった。
どうして、
大好きな母が自由を奪われなければいけないのか。
どうして、
愛情一杯自分を育ててくれた母を助けるという当たり前のことが、
辛く思えてしまうのか。
自分が情けなくて、
やるせない気持ちでいっぱいになった。
こうして毎日を繰り返し、
今まで友達と遊んでいた放課後も母を助けるために早めに帰るようになり、
友達付き合いは自然と減っていった。
今は母もリハビリをして歩けるようになった。
しかし、
記憶力はまだ戻っておらず、
同じ事を3回聞かれることも少なくない。
ただ、
僕の場合は、
母の症状が比較的軽く、
歩行の手助けなどが必要だった期間も1年ほどと短かったため、
こうして学校に通いながら元気に今を生きている。
しかし、
もっと深刻な状態であれば、
かなりの長期間家族のケアする必要があり、
その心労は計り知れない。
では、
ヤングケアラーが生きやすい社会にするにはどうすればよいだろうか。
沢山考えたが、
僕は、
悩みを打ち明けられることが一番大切だと思う。
ただ、
自分がヤングケアラーだと気づいていない人もいる。
実際、
僕もそうだった。
この作文に取り組んだ時、
先生から、
自分がヤングケアラーに含まれると言われ、
初めて気づいたのだ。
これまでは、
「もっと大変な介護をしている人がいる」と思って、
自分はそうではないと思っていた。
だから、
知らず知らずに、
辛いことや悩みを隠していた。
どこかで「家族だから当たり前」と思っていた部分も多い。
しかし、
こうして周りに悩みを打ち明けづらいことが問題を深刻化させている要因にも思う。
だから、
現在社会的にヤングケアラーに焦点があてられたことは大きな前進だ。
また、
公的な支援も増えていて、
実は和歌山県にも相談窓口が各市町村に存在している。
公的な支援をきちんと受けられたら、
負担も減るだろう。
自分の悩みを打ち明けられる。
そのためには、
人間の、
あたたかな輪を広げることが必要だ。
それは、
ヤングケアラーのことを知って、
理解しようとすることも一つだ。
また、
身近な友だちの些細な変化に気付けたり、
心のSOSに寄り添えたりする思いやりの心が何よりも大切だ。
僕は、
沢山の辛さをわかちあえる人間で在りたい。
それは、
周りを思いやることだけでなく、
自分の辛さを自分自身が気づけるようにすることでもある。
また、
しんどい時、
辛い時に、
周りに「助けて」といえるように。
自分の弱さを伝えられる強さを持ちたい。
これは、
ヤングケアラー問題に限ったことではない。
様々な問題が顕在化した今、
全ての人が抱える弱さや辛さを分かち合える社会にしたいと、
強く思う。
さあ、
あたたかな輪を広げよう。
僕と、
あなたから。
』
私は12月16日で知事としての任期が終わります。
同時に青少年育成協会の会長の職も後の知事にお譲りします。
新知事が私以上に熱心に青少年の育成に取り組んでくださることを、
そして協会メンバーの方々が引き続き熱心にご協力くださることを心から祈ります。
和歌山県知事 仁坂 吉伸
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