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方言会話文8選

場面設定の会話:祝儀(本家の長男の結婚を祝う 午前)

音源:和歌山県方言調査報告書(昭和59年度 和歌山県)

A オハヨー ゴザイマス。
  お早よう ございます。

B ア オハヨーサン。
  あ お早ようさん。

A ホンジツワ オメデトー ゴザイマス。
  本日は おめでとう ございます。

B ア オーキニ。 マ アガッテヨ。
  あ ありがとう。 まあ 上って下さい。

A ホナ マー アガラシテ モラオカ。
  じゃ まあ 上がらして もらおうか。

B オー ドーゾ アガッテ。
  おう どうぞ 上がって。

A ホンノ コレ カミバッカリヤケドヨー(1) ホンノ ココロダケ
  ほんの これ 紙ばかりだけれども ほんの 心だけ

  ヤケドモ マー オサメトイテヨー。
  だけれども まあ 納めておいて下さい。

B ソーカエ。 ソラ スマンヨ。 ゴタイソニヨー。 モーサー
  そうですか。 それは すまないよ。 ご大層にね。 もうさあ

  シンセキウチニモ アンマリ タイソニ コエ カケヤント
  親戚内にも あまり 大層に 声(を) かけないで

  ヒテタンヤケドネー。 ソーカエ ソラドーモ ゴテーネーニ
  やっていたのだけどねえ。 そうですか それはどうも ご丁寧に

  アリガトー ゴザイマス。 ゴタイソニ アリガトー ゴザイマシタ。
  ありがとう ございます。 ご大層に ありがとう ございました。

A ソンナ レー ユーテ モラウホロ ツツンレ ナインレ
  そんな 礼(を) 言って もらうほど 包んで ないので

  ハズカシナヤケドヨ マ イレトイテヨ。
  恥かしいのだけれど ま 受け取っておいて下さい。

  (B ナカナカヨ。)
  (B なかなかどうして。)

B オーキニ スマナンダヨー。 ホントニサー ナ マ アノ
  ありがとう 済まなかったよ。 本当にね な ま あの

  ホントニ ミナニ コヤッテ ユオテ モーテサー ウチノ
  本当に 皆に こうして 祝って もらってね 家の

  ムスコモ ヨロコボカエ チャント ユートクヨ。
  息子も 喜ぶでしょうよ ちゃんと 言っときますよ。

A エー ムスコハンヤサカイナ。
  いい 息子さんやからな。

B イヤー モー サー オマハンモ シッテノ トーリヨー
  いやあ もう さあ お前さんも 知っての 通りでね

  ホンマニ マー マー ホヤケド コエデ ワイ トコモ
  本当に まあ まあ だけど これで 私 ところも

  ヤットサー アンシンヒタンジョ。 サー チョット トナリニサー
  やっとね 安心したのです。 さあ ちょっと 隣りの部屋にね

  ユワイノ ゼン ヨーイヒチャンノヨ。 チョット
  祝の 膳(を) 用意してあるのよ。 ちょっと

  クチ ツケテヨ。
  口(を) つけて下さいよ。

A モー ソンナ モンマレ タイソニ ヒテ クレヤイレモ
  もう そんな ものまで 大層に して くれなくても

  エーノニヨ。 シンセキノ モン キョーダイヤノニ ホンナ
  いいのによ。 親戚の 者 兄弟だのに そんな

  オマエ タニンバッタヨナ コト セントイテヨー モー。
  あなた 他人行儀なような こと しないで下さいよ もう。

B マ スワッテ スワッテ。 オ オ スワッテヨ。 オ オ。
  ま 座って 座って。 お お 座ってよ。 お お。

A ホヤ オーキニ。 マー ホナ ソンナニ ス アノ ユーテ
  じゃ ありがとう。 まあ じゃ そんなに (す×) あの 言って

  クレンノヤッター マー チョット ヨバレヨカー。
  くれるのだったら まあ ちょっと ご馳走になろうか。

B サー ツガヒテ(2) モラワー。 ホンマニ スマナンダヨ。
  さあ つがして もらうよ。 本当に すまなかったよ。

A ワエ サー ソゲ(3) ヨー ノマンサケニ ホナマー
  私は さあ そんなに よう 飲まないから じゃまあ

  ユワイブノモンヤサカイニ マー チョット ヨバレヨカー。
  祝い(ぶ×)のものだから まあ ちょっと ご馳走になろうか。

B マー ツイデ アノ ツガヒテ モラウヨ。
  まあ ついで あの つがして もらいます。

A ホヤ オーキニ ホナマー ヨバレラー。
  じゃ ありがとう じゃまあ ご馳走になります。

B ホンマニ サー モー ブンケノ ミナサンニモサー イロイロト
  本当に さあ もう 分家の 皆さんにもさあ 色色と

  シンパイ カケタンヤケドネー ヤットサー
  心配(を) かけたのだけどね やっとね

  コヤッテ。
  こうやって。

A アイラサー ナンニモ ヨー セント ゴブサタバーカリ
  間はさあ 何にも よう しないで ご無沙汰ばかり

  ヒテンノヤサカイ コンナ トキグライ チョットカイグライ
  しているのだから こんな 時ぐらい 少しぐらい

  サヒテ モラワナンダラサー キョーダイノ カオ
  さして もらわなかったらさあ 兄弟の 顔(が)

  ツブレルヨー。
  つぶれるよ。

B ナカナカ サー ホテ ナンニモ ナインヤケド マ ハシ
  なかなか さあ そして 何にも ないのだけれど ま 箸(を)

  ツケテヨ。
  つけてよ。

A ア オーキニ オーキニ ハイ。
  あ ありがとう ありがとう はい。

B サー チョット サー アノ カナイガサー ココロダケチューンデサー
  さあ ちょっと さあ あの 家内がさあ 気持ちだけというのでね

  チョット オアイソニ ツクッタンデネー
  ちょっと お愛想に 作ったのでね

  イテヨ マー。 ホヤケド ヨメドリスル(4) チュータラナー
  たべてよ まあ。 だけど 嫁取りする と言ったらなあ

  オマン トコワマー モー ユーテル ウチニ マタヤケド
  お前さん とこはまあ もう 言っている うちに まただけど

  ヨー ナー エライワナー。
  よう なあ 大変なことよね。

A ワイモ アタマイタノ タネヨー。 イマカラ モーサー
  私も 頭痛の たねですよ。 今から もうさあ

  ドーショーニ トモテンノヨー。
  どうしようか と思っているのよ。

B ヤー キョービノ コトヤサカイニサー チャントサー ウー
  いやあ 今の時代の ことだからね ちゃんとね うあ

  アンタ トコヤッタラ チャント(5) ミツケテ クンノト
  あんた とこだったら ちゃんと 見つけて くるのと

  チャウカエ。
  ちがいますか。

A ミツケテ クレタラ セワナインヤケドナー。
  見つけて 来たら 世話ないのだけどなあ。

B マーナー ホンマニ ウチノワサー ドクサインデ(6) ナカナカサー
  まあなあ 本当に 私の方はね 器用でないので なかなかね

  ヨー ミツケヤント ケッキョクサー タノンデネー
  よう 見つけないで 結局ねえ 頼んでねえ

  アノ ナコードサンノ オセワデサー エン アッテ アー
  あの 仲人さんの お世話でね 縁(が) あって ああ

  マー ホヤケド ヨカッタ マ マ イッパイ。
  まあ だけど よかった ま ま ひとつ。

A ソラ ヨカッター。 ソリャ ヨカッタヨ。 (B ウン。) ソー
  それは よかった。 そりゃ よかったよ。 (B うん。) そう

  モー サー ヤッパリ アイテ コンノワ ミヤイヤヨ。
  もう ねえ やはり あいて 来ないのは 見合い(結婚)だよ。

B ソヤノー。 (A ウーン。) マーサー コレ アレラ
  そうだね。 (A ううん。) まあさあ これ あれら

  フタリサー ナカヨーサー ヒテ クレタラ イチバン
  2人ね 仲よくね やって くれたら 一番

  ウレシインデノー。
  嬉しいことでね。

A モー マタ ジキ オジーチャンニ ナランナンノー。(笑。)
  もう また すぐ おじいちゃんに なるねえ。

B ホントヤナー マー ソー ナッタラ メデタインデノー
  本当やなあ まあ そう なったら めでたいのでね

  マ ホテ マタ シキノ トキ キチャッテヨ スマンケドヨ。
  ま そして また 式の 時 来てやってよ すまないけど。

  (A アー オーキニ。) オクサント イッショニヨ。(A オ。)
  (A ああ ありがとう。) 奥さんと 一緒によ。(A お。)

  ナ。
  な。

A マ シキノ オリワ デヤヒテ モラオ トモテンノヤケドナー。
  まあ 式の 時は 出さして もらおう と思っているのだけどなあ。

B ウーン マー サー シキマデ マー ヨメサンノ ホーガ
  ううん まあ ね 式まで まあ 嫁さんの 方が

  ヨケ タイソ テ ユーケド オトコノ ホーモ ヤッパリナ
  より以上に 大変だ と いうけど 男の 方も やはりな

  ナンヤカヤト アッテヨ マー マタ アノ アンタ トコノ
  何やかやと あってね まあ また あの あなたの ところの

  アレニ マタ コンドノ トキワ ウチノ ホーモ チャント
  あれに また 今度の 時は 私の 方も ちゃんと

  サヒテ モラウヨ。 ホンマニ キョーワ オーキニ。 (A アー。)
  さして もらうよ。 本当に 今日は ありがとう。 (A ああ。)

  ゴ ホントニサー ゴッツォッテ ユーホドノ コト
  (ご×) 本当にさあ ご馳走って いうほどの こと

  ナインヤケド シッカリ アガッテヨ。 (A ア オーキニ
  ないのだけど しっかり 食べてよ。 (A あ ありがとう

  オーキニ。) ハイ。
  ありがとう。) はい。

  1. カミバッカリヤケド
    紙(つつみ紙)ばかりで、中味の金額が少ないという意で、挨拶の場合に謙遜してよく用いられる。ただし、不祝儀の時は「紙ばかり」とは言わないで、「気持ちだけ」などと言うことが多い。
  2. ツガヒテ モラウ
    酒を盃に注ぐのである。「ツガシテ」の「シ」が、「ヒ」となる現象は、子音の摩擦が弱いのにもとづいている。
  3. ソゲ ヨー ノマンサケ
    「ソゲ」は「そんなに」。「ソゲ ユーテモ」(そんなに言っても)のように使う。「ヨー ~セン」は能力がないという際の表現法。
  4. ヨメドリ
    嫁取り。最近の若い世代では用いない。「結婚」である。
  5. チャント ミツケテ クル
    「よい結婚相手を」である。
  6. ドンクサイ
    要領が悪くて、手早くやれないの意。ここでは、よい相手を他人に取られてしまって、いつまでも よう見つけないのである。

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