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和歌山県の民話

百人力(ひゃくにんりき)

出典:美里のむかし話

発行:美里町誌編纂室

むかし、長谷毛原(はせけばら)村にメウガというどえらい力持ちがあったと。
ある日、高野山から金堂(こんどう)を建てるから百人の人夫(にんぷ)を出せというてきたんやと。「困ったことじゃのう。百人も人夫だしたら村の中はからっっぽやがな・・・。」村人たちが思案(しあん)しとると、メウガは、「まかせとけ、わいが一人でいく。」いうて出かけていったと。役僧(やくそう)は、「百人というとるのに、一人だけ来るとは何事かっ!。」と怒ったが、
「百人分の仕事をするけに。」というて、柱やハリを軽々とかつぎ百人分の仕事を一気にやってのけよったと。最後に金堂のハコ棟を上げたんやが、メウガが一人でやってのけたのをねたんだ棟梁(とうりょう)が、メウガを困らせようと思うて、わざと、
「そいでは、ハコ棟(むね)の前とうしろの据(す)え方が間違うとるやないか、早よう据え直せ!。」と、大けな声でどなりおったと。ところがメウガは、やすやすと前うしろをふりかえてやったんやとい。
困ったのは棟梁や、もとどうりにしてくれとはいえず、えらい難儀(なんぎ)しよったんやそうな。
こんな話もあった。ある日、めし時になって、役僧が膳(ぜん)を出してきたんやと。ほたらメウガは、「一人前しか出さへんのか、わいは百人分の仕事をしたんや、百人分の膳を出してくれや。」と、百人分のめしを全部一人で平(たい)らげたんやと。
いよいよ金堂が出来上って村へ帰ることになった。
メウガが土産(みやげ)に百人分のミソをくれ、くれなんだらせっかく出来た金堂をこわすぞ!。というたんで、寺ではしぶしぶミソをくれたんやと。
メウガはそれを持って帰り、村の人たち全部にわけてやったんやと。おしまい。

採話・北 一夫
参考・日本の民話 三十二

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