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和歌山県の民話

鬼の足

出典:初島町誌

発行:初島町教育委員会

椒浜の某(はじかみはまのなにがし)、日頃肝の太いのが自慢であった。毎日箕島(みのしま)方面へ稼ぎに行っていたが、この人また酒好きであったから、仕事の帰りに居酒屋へ立寄っては夜おそく帰宅するのが習いとなっていた。浜筋を来るとさんまえ(三昧・墓場)の前を通る。人っ子一人通らない深夜のさんまえに向って、某かならずこういってどなるのだ。
「やい、鬼でも何でも出てこい。ひねりつぶしてくれるわ」
ある夜のこと、例によって酒をくらい、千鳥足(ちどりあし)でさんまえを通りかかった。彼はいつものように暗い墓地の奥へどなる。
「やい、出てこい」
すると、どこからともなく生臭いにおいがしてきたと思うと、眼の前に一本の丸太のようなものが突き出てきた。
「なんじゃい」そうつぶやきながら手で触ってみると、何とそれは火のように熱い、毛だらけの鬼の足ではないか、彼はとたんに腰を抜かし、這うようにして逃げ帰った。それからは肝の太いのを自慢しなくなったという。

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