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和歌山県の民話

ぽいとこの話

出典:日高町誌下巻

発行:日高町

昔あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいた。あるときおじいさんが親類の家へ用事に行った。親類(しんるい)の家ではおじいさんに「これはよそからもらったものですが、珍(めずら)しいから一つ食べてみませんか」といって、だんごを出してくれた。おじいさんは、だんごは初めてであったので、食べてみるとたいへんおいしい。しかしいったいこれはなんだろう、尋(たず)ねてみると、これはだんごだと教えてくれた。よし家に帰って、おばあさんに作ってもらおう、忘れてはいけないと帰り道に、だんごだんごといいながら、道を歩いて来た。途中(とちゅう)溝(みぞ)があって、おじいさんは溝をぽいと飛び越えた。するとそのはずみで、だんごを忘れてしまった。ああなんとかいったなあ、と考えても思い出しません。「ああそうだ。ぽいとこだ。」それからぽいとこぽいとこと言いながら、家へ帰った。そうしておばあさんに今日親類でよばれた、ぽいとこの話をした。そうしておばあさんに作ってくれないかといったが、おばあさんは、なにがなにやらわからず「そんなもの知らない」というと「知らぬことはあるものか」といって、とうとう口争(くちあらそい)となり、おじいさんは持っていた杖で、おばあさんの頭をたたいた。おばあさんは泣きながら「おじいさん、無理ばかりいって私の頭に大きな、だんごができたよ」というと、おじいさんは「ああ私が悪かった。そのだんごだよ」といったという。

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