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和歌山県の民話

千津(せんづ)の雨乞い

出典:かわべ町の民話と伝説

発行:川辺町教育委員会

昔はどの村もかんかん照りの日が二十日も続くとあちらこちらの池の水が涸(か)れてしまい、村中(むらじゅう)総出(そうで)で定められた山の頂(いただき)に上り、篝火(かがりび)を焚(た)いて雨乞(あまご)いをしたものでした。村によっては遠い高野山まで歩いて火を貰(もら)いに行き、持ち帰った火で篝火を焚いて祈願(きがん)した所もありました。ところが土生(はぶ)の雨乞いは他の村と少し違っていて、雨乞いの当日は村の者が総出で先(ま)ず土生八幡神社の前で般若心経(はんにゃしんぎょう)を読誦(どくじゅ)します。その時必ず土生の旧家(きゅうか)である瀬戸氏(別当(べっとう)と云っている)も出席しますが、祈願がすむと一同は瀬戸家に行き、この家の当主に代々伝わる秘文(ひぶん)を一筆書いてもらうのです。そして、それを持った瀬戸氏を伴った一同は、その後約十キロ離れた三尾(みお)(美浜町(みはまちょう))の竜王(りゅうおう)神社に参詣(さんけい)します。竜王神社で神主(かんぬし)さんの雨乞い祝詞(のりと)が済むと一同はここで般若心経を読誦、その後、瀬戸氏が神社後ろの青海(せいかい)に持って来た秘文を投げるのです。この秘文がうまく渕に届いた時は必ず雨が降ると云われていて「千津が雨乞いをしたから今度は降るだろう」と云った近村の人たちの期待の大きさや、事実、帰りは雨でずぶ濡れになったといった例からも御利益(ごりやく)の程を伺うことが出来ます。また、瀬戸家の秘聞文は秘中の秘で瀬戸家(せとけ)一子相伝(いっしそうでん)と云われ、当主以外は誰も知らないそうです。

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