現在表示しているページ
ホーム > 和歌山の民話 > 美山村:こんにゃく風呂

和歌山県の民話

こんにゃく風呂

出典:美山村史通史編下巻

発行:美山村

昔、あるところにおじいさんとおばあさんと男前(おとこまえ)の色白(いろじろ)の若衆(わかいし)とくずや葺(ぶき)の家に住んどった。ある晩のこと、美しい女の人がな、美しい声で、「おしまいな(あいさつ言葉)」て、入ってきたんやと。ばあさん出て来て、「ようおいでな」て、家の中へ入れたげて、「お前さん、どこからおいでたんない?」と、問うたら、「わし、あそこから来たんやで」て、外を指さいて言うんやと。ばあさん、妙(みょう)に思うたんやけど、そがいなこと、どうでもええわと思うた。そいたらな、「今晩、風呂焚いとんの?」て、聞くんで、「風呂なら焚いとる。じいさん、今、入ってんだ(ら)」と、ばあさんが言うと、「入らしてな」て、言うから、「どうぞ入りゃんせ」て、風呂へ入れたげてん。それから毎夜さ来るんやとう。ある晩去(い)にしなに「風呂の中へ灰入れんといて」て、言うたんで、ばあさんが妙に思うてな、じいさんに話をしたんや。「灰入れてみよか」と言うたら、じいさんは、「そんなことせんとけな」と言うた。せんとけと言うたらよけしとなって、ある晩、じいさんのおらん間に、風呂の焚き口の灰をつまんでポイと風呂の中へ放り込んどいたんやと。そいたらな、また、「今晩、風呂へ入らしておくれ」て、来たさか、「どうぞ、はいりゃんせ、遠慮せんと」と愛想(あいそ)ようしたげてんと。そいて、ばあさんはかま屋でゴキ(茶碗)を洗いよってんと、そいたら「痛いよ、しむよ、痛いよ、しゅむよ」って、泣き出したんやと。ばあさんは、こりゃよわったぞ、と、こわごわトクヨ(徳用)の提灯(ちょうちん)さげて、納戸(なんど)のドブ酒(ざけ)呑(の)んで、快(こころよ)う寝ているじいさんを起こしに行ったんやと。じいさんは「それ見い、わしの言うこと聞かんさか」てブツブツ言いもて、ブルブルふるいながら・・・・・・。そいたらな。泣き声止まってんと。そいでな、二人で風呂をのぞいたら、中に大きなこんにゃくが、風呂の底にとこんとったとう。こんにゃくが美しいおなごに化けて、若衆目当てに通いよってんと。(話者・玉置初子)

このページのトップに戻る