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和歌山県の民話

琴の滝の牛鬼

出典:すさみ町誌下巻

発行:すさみ町

上戸川(こどがわ)の支流の広瀬谷にかかる琴の滝は、今でこそ周囲に広い道がめぐっていて明るく開けているが、昔はあたり一面に大きな樹木が生い茂り、昼でもうす暗い中にとうとうと滝水が落ち、深くよどんだ滝つぼに冷たい水をたたえていた。
この滝つぼに牛鬼というおそろしい動物が住んでいた。牛鬼というのは、人の影を食べる鬼である。影を食べられた人は、必ず間もなく死んでしまう。
ある日、ひとりのお百姓が滝の所へ草を刈りに行った。
突然、大きな牛鬼があらわれた。お百姓はびっくりして助けをよびながらけんめいに逃げたが、とうとう牛鬼に追いつかれ、影を食べられてしまった。気の毒に影を食べられたお百姓は死んでしまった。
村人は正月にはこの牛鬼に酒をもっていって供えた。すると牛鬼はたいそう喜んだそうだ。お酒が大好きな牛鬼は、お酒を持ってきてくれるような村人には影を食べるようなことはしなかったということだ。

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