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紀の国の先人たち

教育者 天石 東村(あまいし とうそん)

大正2年(1913)~平成元年(1989)
和歌山市生まれ
書道教育の発展に尽くした書道家

いかにして書を人生に生かすかという、書をとおしての人間形成こそが大切であるという指導理念で生涯を書に尽くした天石東村は大正2年(1913)、現在の和歌山市に生まれた。昭和8年(1933)和歌山師範学校を卒業後、県立和歌山高等女学校教諭、県立桐蔭高等学校教諭、和歌山大学講師、奈良教育大学教授を歴任。

数多い中国古典の中から王鐸を中心とする明清の書風を学び、空海、藤原行成、良寛などの名蹟からも影響を受け、独自の繊細な書風を創りあげた。

昭和23年(1948)和歌山県書道教育連盟を結成し、和歌山県の書道教育を全国屈指の水準に引き上げるとともに、小・中・高校生の書道教科書の執筆にあたるなど書道教育に尽力する一方、日展で特選2回、昭和36年(1961)には日展審査員となり、昭和47年(1972)に日展文部大臣賞を受賞し、書道界において確たる地位を築いた。

書は、一たび筆を紙に落したならば書き直そうとしても反覆は許されないという「書の一回性」を提唱し、教育の場で最大の効果をあげた。また、従来の手本第一主義から「考える書」へと発想を転換、「古典の中には美しく”書”を書く秘密(原理原則)がある。それを考え探り出そうとすることが創作へとつながっていくものであり、書道教育の目指す方向である。」との理論体系をうち立てた。こうして近代的書道の理念と方向性を明確に示すという大きな功績を残したのである。

平成元年(1989)、書道教育の発展に尽くした天石東村は76歳で亡くなった。

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