1876年(明治9年)~1956年(昭和31年)
美山村 生まれ
敬虔な牧師であり、大逆事件を小説に著した作家
父母とは幼少の頃に離れ、祖父に育てられる。孫の教育に熱心であった祖父は、就学率が極めて低かった時代に岩三郎を小学校に通わせる。
17歳の時、和歌山市の僧侶である伯父の寺に下宿して中学予備校に通い、和歌山師範学校を受験するが失敗。帰郷して、日高郡川原河小学校の授業助手となった頃、宗教心が芽生える。
明治28年、和歌山師範学校講習科に入学。卒業後、川原河小学校の教員補佐となる。 この頃から小説等の創作活動を始める。明治31年、龍神小学校に校長兼訓導として転任し、亀井ハルと結婚。明治36年、小学校を退職し、和歌山市有田屋町に「私立和歌山図書館」を開設する。
翌年、牧師になる決意を固め、明治学院神学部に入学。新宮教会に赴任し、後に大逆事件で処刑された「ドクトルさん」こと、大石誠之助と出会う。親交のあった岩三郎も疑われてしまうが、助かる。このとき、当時の政治的支配層の陰謀で抹殺された仲間たちの真実の姿を記して、世に表すことこそ自らの義務と感じ、その事件の真相を小説にする。これが処女作「宿命」である。その後、執筆活動に専念。自然主義キリスト教文学をはじめ、童話、歴史研究、平田篤胤の研究など、数多くの作品を残している。
晩年、糖尿病の悪化で目が見えなくなり、文献蔵書数百冊を明治学院大学図書館に寄贈する。また、浅間高原教会を設立し、熱心な布教活動から「軽井沢の聖者」と慕われた。